Cheese magazine チーズマガジン

ヨーロッパ出張レポート【後編】

お待たせしました!ヨーロッパ出張レポート後編です。前編ではSIAL国際食品見本市を中心にフランス・パリのマーケット事情などをお伝えしました。今回はイタリア編です。フランスよりも日程は短かめですが、ゴルゴンゾーラの工場見学やミラノのマーケット事情など盛りだくさんでお届けします。

2016年10月21日(金) IGOR社工場見学

お昼前にミラノを出発し、車を東に走らせて1時間ほどでIGOR社に到着。同社は1935年創業、イタリア最大のゴルゴンゾーラメーカーです。今日訪れる工場は、1996年にNovaraの地に新設された1万5千平方メートルの敷地面積を持つ大きな施設です。ちなみに、工場の周りは有名なリゾット米の産地なんだそうです。

工場に入ると輸出マネージャーのレオナルディ氏がお出迎え、ご挨拶します。当日のレオナルディ氏は白ぶちメガネにマフラーを首からさげ、ボトムはデニム姿というなんともちょい悪ないでたちで、まるでファッション誌から飛び出してきたかのようです。フランス同様、服飾産業の盛んなイタリア。チーズ会社にお勤めの方もおしゃれです。



話が横道にそれましたが、挨拶後はミーティングルームに案内され、ビジネスランチでゴルゴンゾーラを使ったコース料理といろんなタイプのゴルゴンゾーラをいただきます。お料理はゴルゴンゾーラの風味が強すぎず食材とのマッチングが絶妙で、ブルーチーズが若干苦手な私も美味しくいただけました。試食では、なんと山羊乳製のゴルゴンゾーラが登場!「シェーブルでブルーチーズだなんて、どれだけ個性的なんだ!?」と初めはおっかなびっくりでしたが、あまりくせはなく意外と食べやい味です。日本でも流行るかも?初めから終わりまでゴルゴンゾーラづくしで一生分を食べたような気持ちになります。





ランチの後はいよいよゴルゴンゾーラの製造見学へ。はじめに、カード(乳を凝固させたもの)のカッティングを行い、その後、穴の開いた型に詰めて余分な水分を切ります。その後、刻印型とともにカードをプレスします。そのため成形されたチーズにはゴルゴンゾーラの刻印が刻まれています。この印がないものは、ゴルゴンゾーラを名乗ることが出来ません。




次は加塩の工程です。回転しているチーズに、これでもか!というほどの塩がドバーっとかけられます。規定量の塩分値でないと熟成がうまくいかないのでここはしっかりと。


加塩後、チーズを休ませてから機械で串刺しにします。一体なんのために?と思われるかもしれませんが、空気がこの穴を通っておいしいカビが育っていくためブルーチーズの製造には欠かせない工程です。




その後、数ヶ月間熟成庫に保管されます。表面にもしっかりと青カビが育っていれば熟成もうまく進んでいる証拠です。合格品は包装されて出荷を待ちます。






IGOR社は伝統的なゴルゴンゾーラを機械を導入して近代的かつ清潔に製造しており、品質管理にも力を入れていることを実感しました。又、本で読むだけではピンとこなかった製造工程も、現場を実際に見て、しっかり理解することができました。


2016年10月22日(月) ミラノ市場調査

今日はミラノの市場を回ります。怒涛の5ヶ所訪問、気合を入れて挑みます。

SUPER DI

まずは、ミラノ郊外にあるSUPER DIへ。こちらは地元密着型スーパーです。店内は庶民の台所といった感じで飾らない雰囲気。こぢんまりしたお店ですが、チーズ売場は広く取られています。地元の人が多いせいか、輸入品よりもモッツァレラ、パルミジャーノ・レッジャーノといった自国のチーズが目立ちます。棚にSIALで訪問したBiraghi社のチーズを発見。ブースで試食したのが既に遠い昔のように感じられます。






COOP


2ヶ所目はCOOP。ショッピングモール内の大型店です。こちらは、カット販売している対面型と通常のセルフ型売場の2ヶ所があります。対面の売場では、マダムがちょうどカットしたチーズをパッキングし終えたところで、どんどん売場へ並べていきます。






セルフ型売場では、スーパーでは珍しいリーチインケース(冷蔵で陳列できるガラス扉つきの什器)を採用しています。ヨーロッパの乳製品コーナーは通路を挟んでどこまでも長い両面冷蔵ケースであることが多く、うっかり薄着で行くと凍えそうになりますがこれなら安心、ゆっくり見ることが出来ます。セルフでは、PB品が多くみられました。





ちなみに、ワイン売り場も両面で迫力と充実の品揃えです。これはワイン好きには堪りませんね!


ESSELUNGA

3ヶ所目は、ミラノ中心地にある、ESSELUNGAです。こちらは、輸入食材などを多く扱う高級スーパーで、全体的にお値段は高めです。COOP同様、対面とセルフの売場があり、見学中ひっきりなしにお客さんがやってきます。仕事柄、どの国へ行ってもその土地のシュレッドチーズが気になる私。売り場をくまなく探しますが、イタリア滞在中に袋入りのとろけるチーズは見つかりませんでした。後で聞いたところ、実はイタリア人はシュレッドチーズを使わないからお店にもおかないそうなんです!ここにきても、文化の違いを感じました。






PECK


4ヶ所目はドゥオーモ近くのPECKへ。1883年創業の老舗高級食料品店で、日本でも数店舗展開しています。イタリアの高質な食材を厳選して取り扱っていて、価格はぐっとお高めです。店内はシックな雰囲気。陳列ケースにはいろんなチーズが見やすくディスプレイされていて、生野菜を添えてフレッシュ感を演出しています。個人的には、焼きリコッタが美味しそうで気になりましたが、日本へ持ち帰るには鮮度が心配だったため記念撮影にとどめました。はちみつをかけて食べてみたかった・・・






EATALY


いよいよ最終の5ヶ所目は、EATALYです。こちらも日本で展開していますね。イタリアの高級食料品を扱っている点はPECKと同じですが、こちらはもう少しカジュアルでマルシェのような雰囲気。ディスプレイがおしゃれで、チーズの品揃えも豊富です。こちらではパルミジャーノ・レッジャーノがホールで販売されています。確か1ホールは30KGぐらいあるはず。買ったらどうやって持って帰るのか・・・そして、今日一番驚いた商品、それはパルミジャーノ・レッジャーノ120ヶ月熟成タイプです!10年間も熟成させているなんて、いったいどんな味なんでしょう?というか、かじったら歯が欠けてしまうんじゃないかと色々な想像が広がりますが、ここまで熟成期間の長いものはさすがのイタリア人もほとんど食べないんだとか。ちなみに気になるお値段は1KGあたり96.8ユーロでした。ご興味がある方は、イタリアへお越しの際トライしてみてください!






まとめ


前編と後編にわたってお届けしてきました出張旅行記はこれでおしまいです。普段は営業業務に携わっているため海外との接点はあまりありませんが、今回は普段見ることのできない商品や、ヨーロッパのチーズの「今」を直接見ることができ、良い刺激を受けました。機会がありましたら、また皆さまにレポートをお届けしたいと思います。お付き合いいだたきましてありがとうございました。


チーズマガジントップ