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青カビタイプ第三弾 イギリス産「スティルトン」の紹介

今回のチーズマガジンは、スティルトンをご紹介します。

生まれはレスターシャー、メジャーデビューはスティルトン

スティルトンはイギリスを代表する青カビタイプのチーズで、世界三大ブルーチーズの一つです。フランスのロックフォール、イタリアのゴルゴンゾーラはそれぞれ発祥の地名がそのままチーズの名前になっていますが、このスティルトンは少々事情が違っています。

スティルトンが生まれたのは18世紀末頃。レスターシャーのとある農夫が、ロンドンから130キロ北に位置するスティルトンの街の旅籠に嫁いだ妹に自分たちが作ったブルーチーズを贈ったのが始まりと言われています。これを宿泊客に提供したところ、あまりのおいしさにたちまち旅籠の名物となりました。

あるジャーナリストがこの旅籠に宿泊した後、「Tour through England and Wales」という本を出版しました。本の中で、旅籠で味わったおいしいブルーチーズを「スティルトン」の名前で紹介したことがきっかけとなり、世に広められイギリスを代表するメジャーなブルーチーズとなりました。したがって産地はスティルトンではなく、スティルトンより北のレスターシャーなのです。このほか、ダービーシャー、ノッティングガムシャーもスティルトンを製造しており、これらの3州が産地となっています。余談ですが、この旅籠は現在も営業中です。気になる方は、「ザ・ベル・イン・スティルトン(The Belle Inn Stilton」で調べてみてください。


 



まったりとしたリッチな味わい


スティルトンは直径約20㎝、高さ約30㎝の円筒形をしており、重さは約8㎏ほどあります。現在は、前述の3州にある6社がPDO(原産地名称保護制度)で厳密に定められた製法で製造しています。
茶色がかったグレー色のでこぼこした無骨な外皮に反して、中身は薄いクリーム色の組織にグリーンの青カビが広がった、大理石のような美しい姿をしています。バターを思わせる緻密な食感とまったりとした濃厚なコクがあり、大変リッチな味わいです。そこに青カビの上品なほろ苦さが加わり、食べ終わった後にミルクの甘みと香り高い青カビの風味が心地よく口の中に残ります。ちなみに、青カビが入らない「ホワイトスティルトン」もあり、こちらは青カビ入りに比べ熟成期間が短くフレッシュな味わい。ブルーベリーやクランベリーなどのベリー類が入ったものも人気です。



スティルトンをもっとおいしく




フルーツといっしょに

他のブルーチーズ同様、プルーン、デーツ、レーズンなどのドライフルーツの他、フレッシュなぶどうにもよく合います。



フォーク

野菜とあわせて

野菜との相性も良く、セロリやブロッコリーと合わせてもおいしいです。グリーンサラダに細かく切ったものをトッピングして、バルサミコ酢のドレッシングをかけてもGOOD。




肉料理にも

お肉は、特に牛肉と合わせると旨味の相乗効果でよりおいしくなります。焼きたてのビーフステーキの上に薄く切ってのせるだけで、簡単で味わい深いステーキソースになります。又、牛ひき肉とスティルトンを使ったパイ包みもイギリスでは親しまれています。


チーズ、エメンタール、グリエール(グリュイエール)


アルコールとのマリアージュ

ワインは甘くてコクのあるポートワイン、貴腐ワインは定番の組み合わせです。イギリスでは、食べる1週間前にスティルトンの上部をくり抜いて、そこにポートワインをしみこませるというユニークな食べ方もあるそうです。ご興味のある方は、ぜひ試してみてください。その他のアルコールは、香りのよいウィスキーとも相性が良いのでおすすめです。

保存方法

乾燥しないようにきっちりラップに包んだら、アルミホイルを巻いて遮光して冷蔵庫で保管します。青カビは繁殖力が高いため、ほかの食品へのにおい移りに注意しましょう。気になるようでしたら、チャック付き密閉袋に入れてください。


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